実力派デザイナー × プロフェッサーズラウンド対談【CONCEPT HAKUI vol.1】 

「CONCEPT HAKUI 」として白衣を制作。意見交換しあう中で二人のデザイナーと起きる化学反応で新たな白衣を提案

医療用白衣のセレクトショップ、プロフェッサーズラウンドでは2009年のオープン当初から医療従事者のモチベーションがあがるようなメディカルウェアをセレクトして取り扱ってきました。

現在、各メーカーから様々なメディカルウェアがリリースされ、お洒落な白衣という一部の盛り上がりが落ち着き、少しずつ浸透してきたように感じられます。

本企画ではこれまでにありそうでなかった白衣、今後求められるメディカルウェアは何かなど、一線で活躍しメディカルウェアにも精通している実力派デザイナーと共に考え、ファッション、SDGs、社会的意義、などを踏まえた上で、「CONCEPT HAKUI 」として白衣を制作。意見交換しあう中で二人のデザイナーと起きる化学反応で新たな白衣を提案。

デザイナー:浜井
浜井弘治

デザイナー / うるとら浜井デザイン事務所/ イッセイミヤケ出身 / 受賞歴: 装苑賞受賞(国内1位)

デザイナー:宮崎
宮崎能典

デザイナー/ レピウス / ハナエモリ出身 / 受賞歴:仏オートクチュール協会主催ファッションクリエーター新人賞国際コンクール奨励賞受賞(国内1位)

医師:藤元
藤元流八郎

医師(日本内科学会・日本神経学会 昭和大学 脳神経内科兼任講師) / プロフェッサーズラウンドオーナー / 医療法人社団鳳優会理事長

白衣を考えることでみえる現代社会の問題

「CONCEPT HAKUI」を制作するにあたって、今回は受賞歴あり豊富なキャリアをもつ二人のデザイナーに参加いただいた。

各自具体的なテーマを決めて制作する進行を予想していたが、デザイナー同士でのブレストはアパレル業界が抱える社会問題の話からはじまった。

デザイナー:宮崎
宮崎氏 / デザイナー

「ユニフォーム業界は当てはまらないとは思いますが、ファストファッションをはじめアパレル業界では新品の大量廃棄が問題となっていますね。原価を低くするために大量につくる、余ることも前提で原価を低くするためにたくさん作る・・、セールしても売れ残っってしまったものは捨てた方がコストがかからないから捨てる・・。資本主義の仕組みの中で必然的に起きたことかと思いますが、今後は厳しいですよね。」

デザイナー:浜井
浜井氏 / デザイナー

「これまで海外低賃金労働の上になりたっていることも問題ですね。”ザ トゥルーコスト”見ました? ファッション業界の裏側を描いた映画で、服の価格が低下する一方で、人や環境が支払う代償は劇的に上昇してきた・・といった内容で、とても考えさせられましたね。この数十年国内の縫製工場は減りましたね。」

医師:藤元
藤元 / 医師 兼 白衣専門店オーナー

「ユニフォームでは新品廃棄ということはほとんどないようにも感じますが、アパレルという点では無関係ではないですね。消費者としても生産者としてもこれからはただ安いだけを求めるわけにはいかない時代になってきますかね。白衣のテーマではありますが、とても大事ですよね。ユニフォームでは洗濯面でポリエステル主流で、品質・機能など格段によくなってきているとは思いますが、使用する生地としてはなにかお考えありますか」

デザイナー:浜井
浜井氏 / デザイナー

「ポリエステルは性能がよくなっていますよね。これまで化学繊維だから環境によくないという考え方もあったかもしれませんが、最近ではケミカルリサイクル(※1)がでてきて、SDGs(※2)の面でも企業努力がかなり進んでるようです。 ペット素材を溶かして再利用する若干品質が劣るマテリアルリサイクルはありましたが、化学的処理で原料を再生させて同じ品質の新しい製品がつくれる技術がでてきました。コスト面の課題もあるようですが、今後は大手アパレル企業は積極的に取り組んでいくようです。そして技術をもっている企業のほうでは、大手一社だけが独占するようなことにならないようにする方針もあるようですので、ポリエステル素材のリサイクルが本格的広がりそうです」

デザイナー:宮崎
宮崎氏 / デザイナー

「アパレル業界では大手企業が独占といったことがよくありますがリサイクル技術の独占はよくないですね。 ところで素材の他にもSDGsを踏まえてLGBT(※3)の面でテーマを考えてもよいかと思いました。例えば男性の骨格でもかわいらしいものを着たいトランスジェンダーといわれる方もいらっしゃいます・・・。ファッションを学んでいた頃や、アパレルファッションの企業で働いていた頃は、昔でしたが隠さずオープンな人も多くて。ただ医療業界でオープンな人ってあまり聞きませんかね」

デザイナー:浜井
浜井氏 / デザイナー

「たしか文化服装学院出身ですよね、わたしもです。昔でしたが今でいうLGBTはいましてオープンでしたね。」

医師:藤元
藤元 / 医師 兼 白衣専門店オーナー

「お二人は同じ出身でしたか。ちなみに余談ですが私は白衣ショップをはじめてから白衣の研究をして論文発表後に、杉野服飾大学で講師をしたこともありまして・・・、」

デザイナー:浜井
浜井氏 / デザイナー

「驚きですね」

デザイナー:宮崎
宮崎氏 / デザイナー

「え、そのお話も気になりますが。。」

医師:藤元
藤元 / 医師 兼 白衣専門店オーナー

「余談でした。LGBTの件ですね、医療の現場ではあまり聞きませんね。私の周りに限っての意見ですがオープンな方はいないです。世代での違いなどはあるかもしれません。」

様々なデザインや機能的白衣が各メーカーから次々とリリースされてきている昨今、プロフェッサーズラウンドでは、お客様のニーズにあわせて製品の販売をしつつも、画一的な陳列にならないよう珍しくて、ここでにしかないようなメディカルウェアを探したり、オリジナル制作したいと考えることが多い。そこでプロフェッサーズラウンドで取り扱いしているブランドの代表者で白衣もデザインし第一線で活躍するデザイナーの二人に今回はお声がけさせていただいたわけだが、ファッション業界を長く経験し自ら制作に携わるデザイナー同士でのブレストは、白衣を考えることを通じて社会問題などに話が広がっていった。

(※1)ケミカルリサイクル

原料となる廃棄プラスチックを細かく砕いて洗浄し、熱で溶かして紡糸するマテリアルリサイクルに対して、回収したプラスチック・合繊を化学的な処理によって合繊原料まで戻し、再び通常のプロセスで合繊を作るのがケミカルリサイクル。品質の高い糸が作れる。

(※2) SDGs

「持続可能な開発目標」。世界中にある環境問題・差別・貧困・人権問題といった課題を、世界で2030年までに解決するという計画・目標

(※3)LGBT

性的少数者 (セクシャルマイノリティ) を 表す言葉。Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)の頭文字を取ったもの

環境によいだけではない。機能面でも医療用白衣には天然素材がマッチする?!

医師:藤元
藤元 / 医師 兼 白衣専門店オーナー

「浜井さんのほうで以前手掛けた和紙素材ってどうですか?少し前にアパレル製品でもありましたよね。綿と和紙の混合で、土に還る天然素材ですし、サステナブル素材ですよね」

デザイナー:浜井
浜井氏 / デザイナー

「和紙素材、進化していてどんどん使い勝手もよくなっていますね、実用にあたってはデータも揃ってきています。 調べるほど、古来より生活に役立ってきた和紙は、通気性、保温性、吸水性、消臭・抗菌作用、丈夫さなど機能面で衣類にもマッチしていると思います。」 さらに続く。。 「また他にも、山口県に拠点を移してからはじめて知った実用的な天然素材で竹を炭素化して作ったボタンがあります。 普通の竹のボタンとは違い、炭素化することでプラスチックの2倍の強度にもなるんです。」

デザイナー:宮崎
宮崎氏 / デザイナー

「いわゆるカーボンをイメージすれば良いですかね、確かに丈夫ですね」

デザイナー:浜井
浜井氏 / デザイナー

「はい、またかつて竹材や筍をとるために管理されていた竹林ですが、海外製品におされて経済的に成立しなくなった現在は、元来繁殖力が強いこともあり、無秩序に増えて山を荒らして竹害となっています。積極的にこのような天然素材を活用していくことで打開できるかもしれません。」

浜井氏のサステナブルな取り組みは最近にはじまったことではなく、30年以上も前から取り組んできており、その知識はとても深く幅広いことに驚かされる。

浜井氏が今回取り組むテーマは天然素材をつかったメディカルウェア。
和紙素材の生地、地元山口県の竹を炭素化してつくられた釦をつかったものに。
実用的であるデータをみせていただき、プロフェッサーズラウンドでも一緒に取り組めないかと相談するまでに至る。

ファッション界の視点からトランスジェンダー白衣への試み

デザイナー:宮崎
宮崎氏 / デザイナー

「デザイナー同士や白衣ショップ兼ドクターとブレストすることなど滅多にないので、ファッション界では比較的よくとりあげられるトランスジェンダーをテーマに挑戦してみたいと思います。真剣に取り組むために深く調べて、意見いただいたうえで形にしたいと思います。」

医師:藤元
藤元 / 医師 兼 白衣専門店オーナー

「保守的なところもある業界かもしれません。偏見をもつ業界とは思いませんが、高齢の患者さんなどいらっしゃいますし、まだまだオープンになれない理由はあるのかもしれません。難しい感じもしますが・・ただ、今回の企画にはピッタリかもしれませんね!」

デザイナー:宮崎
宮崎氏 / デザイナー

「難しいテーマかとは思っています。また、そもそもレピウスの白衣は男女さが明確なデザインですので、個人的にも難しい挑戦かとは思っています。単純にデザインを入れ替えるだけでは大きな違和感がでてしまうことが予想できます。違和感をなくすことを目的とするといわゆる普通のユニセックスデザインになってしまうので、あまり挑戦する意味がなかったりします。」

デザイナー:浜井
浜井氏 / デザイナー

「イッセイミヤケ、PLEATS PLEATSなども関わっていますが、そういえば以前男性ユニフォームで背中にプリーツを提案したことがありました。なかなか難しいですよね、でもとても面白そうです」

初回デザイン案みせていただいたところ、想像以上に難しいのではと感じる。しかしながらテーマや過去のデザインを深く調べあげ作品として形となるデザインを探ることになった。

宮崎氏が今回取り組むテーマはトランスジェンダーのメディカルウェア。
メディカルウェアのファッションは一般アパレルでもまだニッチな分野になるのではないか。またその中で取り組むテーマとしてはさらにとても狭いとも思える。しかしながらデザイン案を作る中で新たな発見も。。

宮崎氏インタビュー動画近日公開予定

コンセプト白衣対談

CONCEPT HAKUI (コンセプト白衣)の発表は今年の秋冬を目途に東京、名古屋店舗にて展示予定です